About

ステイトメント

忘れないためにつくり続ける。

私は家族との思い出を忘れないためにつくり続けています。

1994年、24歳だった妹は脳腫瘍で、25年間連れ添った妻は2016年に乳がんでこの世を去りました。確かに存在していたはずの大切な「何か」が、目の前から消えてしまった驚きと悲しみ。再び会いたくても、決して叶わない現実。私はこの葛藤に向き合い、形にしてきました。

作品の多くは、塩で巨大な模様を描くインスタレーションです。床に座り、長い時間をかけて描くことで、時と共に薄れゆく記憶を繋ぎ止めようとしているのかも知れません。私は忘却という自己防衛本能に抗う仕掛けとして作品をつくり、別れを受け入れるための納得できる受容のかたちを探しているのです。

「塩」 - 生命の記憶

塩は古今東西、人々の生活に深く結び付いてきました。日本ではお葬式などの慣習としても欠かせない物質です。

私は人の死について、また社会の中での位置付けについて考え、向き合ってきました。当初はお経や終末期医療などをテーマに様々な素材を用いて制作していましたが、お葬式に興味を持ったとき選んだ素材が塩でした。

清めや浄化の意味を持っていることがきっかけで使い始めた塩ですが、私はわずかな透明感を持つ白さに強く惹かれました。塩は無色透明な立方体、結晶です。しっとりとしたその優しい色合いは、喪失感を感じていた私の心を包み込んでくれました。また作品の一部となっている塩も、かつては私たちの命を支えてくれていたのかも知れない。そんな思いを抱くようになったから頃から、塩には「生命の記憶」が内包されているのではないかと感じるようになりました。

塩を使い始めて四半世紀が過ぎましたが、私は今も特別な想いを寄せているのです。

「海に還るプロジェクト」は、作品で使用した塩を、主旨に共感してくださった皆さんの手をお借りして海に還すというものです。展覧会最終日に集まって下さった方々の手で作品を壊し、その塩を集めて海に還します。長い歴史の中でほんの一瞬、作品の一部として使わせて頂いた塩を、再び自然のサイクルに戻す気持ちで行っています。

2006年からはじめたこのプロジェクトには延べ数千人の方が参加してくださり、世界中の海に塩が還りました。

 この塩を海に還してください。近くの海岸や旅行で訪れるビーチでも構いません。作品としての形は消えてしまいますが、この塩が再び海をめぐり、さまざまな生き物の命を支えてくれることでしょう。もしかしたら私たちが再び口にする機会が訪れるかもしれません。もちろん作品の素材として再会できれば、最高の喜びです。

プロフィール

山 本 基 Yamamoto Motoi

浄化や清めを喚起させる「塩」を用いてインスタレーション作品を制作。床に巨大な模様を描く作品は長い時間を掛け、一人で描き上げる。展覧会最終日には作品を鑑賞者と共に壊し、その塩を海に還すプロジェクトを実施している。
また、緻密なドローイング鉛筆画なども制作。近年は企業とのコラボレーションも手掛けるなど精力的に活動を展開している。

ニューヨーク近代美術館 MoMA P.S.1をはじめ、エルミタージュ美術館、東京都現代美術館、箱根・彫刻の森美術館、金沢21世紀美術館、瀬戸内国際芸術祭等、国内外で多数発表。現在、石川県金沢市在住。

1966 広島県尾道市生まれ
1995 金沢美術工芸大学 絵画専攻 卒業
2002 フィリップモリスK.K.アートアワード2002 P.S.1賞 受賞
2003 ポロック・クラズナー財団 奨学金
2010 ボイジャー+AITスカラシップ・プログラム 奨学金

主な個展

2021
「迷宮 -WHITE DIARY-」eN-arts、京都
「さくらしべふる」瀬戸内市立美術館、岡山
2018
「たゆたう庭」イエリモンティ・ギャラリー、ニューヨーク
2015
「原点回帰」ポーラミュージアム・アネックス、東京
2014
「海に還る」ウェイバー・ステイト大学&ウエストミンスター大学、ソルトレイクシティ
「海に還る」ギャラリェ・パティキュリェ、パリ
2013
「海に還る」ミント美術館、シャーロット
「たゆたう庭」瀬戸内市立美術館、岡山
「海に還る」モントレー美術館、モントレー
「たゆたう庭」エルンスト・バルラッハ・ハウス、ハンブルク
「たゆたう庭」インガ・ギャラリー、テルアビブ
2012
「海に還る」ホーズィー・インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート、チャールストン
「海に還る」ラバンド・アート・ギャラリー、ロサンゼルス
2011
「しろきもりへ」箱根・彫刻の森美術館、神奈川
2010
「たゆたう庭」 eN-arts、京都
「ザルツ」クンストステーション・サンクトペーター教会、ケルン
「たゆたう庭」Art-O-Rama、マルセイユ
2009
「桜」金沢アートグミ、石川
「桜」ミキコサトウ・ギャラリー、ハンブルク
「迷宮」グローセン・ブライヒェン・ビルダー、ハンブルク
「迷宮」L MDギャラリー、パリ
2005
「浄化」三菱地所アルティアム、福岡
「しろきしろへ」下山芸術の森・発電所美術館、富山
「ホワイトソルト」イェリモンティ・ギャラリー、ミラノ、イタリア
「迷宮」CAI、ハンブルク

主なグループ展

2021
「奥能登国際芸術祭 2020+」旧小泊保育所、石川
「しつらう展」舟あそび、石川
2020
「幻想の銀河 – 山本基×土屋仁応」ザ・ギンザスペース、東京
「紫幹翠葉 −百年の杜のアート」明治神宮ミュージアム、東京
2018
「変容する家」元ちゃんハウス、金沢(金沢21世紀美術館企画)
2017
「高見島―京都:日常の果て」京都精華大学
「海と山のアート回廊」+「十字路」五右衛門風呂の家・乙1731、尾道・広島
2016
「UNIVERS’ sel」エーグ・モルトの城壁、フランス
「BIWAKOビエンナーレ2016」近江八幡、滋賀
「瀬戸内国際芸術祭2016」中塚邸・高見島、香川
「六本木アートナイト2016」六本木ヒルズ、東京
2015
「ミラノ万博:にっぽんサローネ」ステッリーネ宮殿、ミラノ
2014
「本多の森工芸回廊」中村記念美術館・耕雲庵、金沢
「ニュイ・ブランシュ」パリ市庁舎
2013
「周縁からのフィールドワーク」京都造形芸術大学 ギャルリ・オーブ、京都
「第6回 メル国際ビエンナーレ」聖サヴィアン教会、フランス
「ピース・ミーツ・アート!」広島県立美術館
「二十億光年の孤独」金沢アートグミ、石川
「物の哀れ」エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルグ
「おくの細道」スコッティデール現代美術館、アリゾナ、アメリカ
2011
「シティ-ネット・アジア2011」ソウル市立美術館、ソウル
「メイキング・メンズ」ベルビュー美術館、ワシントン州
2010
「MOTアニュアル2010:装飾」東京都現代美術館、東京
「レリーフ」エスパス・エキュロイユ財団、トゥールーズ
2009
「愛についての100の物語」金沢21世紀美術館、石川
2008
「ブラック、ホワイト・アンド・グレー」MA2ギャラリー、東京
「いのちの法則 -生をひもとくための3つの書-」足利市立美術館
2007
「自然の力Ⅱ」サムター郡立美術館、サウスカロライナ
「アーティスト・イン・レジデンス・尾道」旧和泉家別邸、広島
2006
「C.A.R.Kプロジェクト2006」金沢展-石川国際交流サロン、金沢&ギリシャ展
「自然の力」チャールストン大学、サウスカロライナ&デイビットソン大学、ノースカロライナ
2005
「ホッホ・ヒナウス」トゥーン美術館、スイス
「ライジングサン・メルティングムーン」イスラエル美術館、エルサレム
2004
「光州ビエンナーレ2004 “エコ・メトロ・プロジェクト”」光州、韓国
「21世紀の出会い -共鳴、ここ・から」金沢21世紀美術館、石川
2003
「ザ・ファーストステップス」P.S.1、 ニューヨーク
「ミューテイテッド・ゼン」ナナリー・ギャラリー、ロンドン
「こきゅう」ヴィットリオ・エマヌエーレⅡ世のガッレリア、ミラノ
2000
「インスタレーション展」ベラクルス州立彫刻庭園美術館、メキシコ

主なコラボレーション

2020
「幻想の銀河 – 山本基×土屋仁応」ザ・ギンザスペース、東京
2019
「ロイヤルコペンハーゲン HAV新作発表イベント」21_21 DESIGNサイト、六本木
2018
「OFX CM制作」シドニー
2005
「ギンザコマツ・ディスプレイ」東京

RETURN TO THE SEA : Motoi Yamamoto’s Art Documentary / Director’s cut  (YouTube / 日本語・英語字幕)
A short film produced by creativehybird & Mr+Positive (C)2019 / 2019 / 4′ 20″

映像ですが、制作の様子はもちろん、インタビューや塩を海に還す様子までを編集したショート・ドキュメンタリーです。

「個展:RETURN TO THE SEA」(viemo / 英語) 
制作:Halsey Institute of Contemporary Art / 2012 / 12′ 47″
メイキング&インタビュー (YouTube / 英語)  「個展:RETURN TO THE SEA」
制作:Halsey Institute of Contemporary Art / 2012 / 8′ 43″