
このたび、新たな表現への取り組みとして、2つのNFTコレクションを公開しました。
これらは、長年取り組んできた塩のインスタレーションの延長線上に位置づけられる作品であり、記憶や時間をテーマとする私の制作を、デジタル空間へと静かに広げていく試みです。


コロナ禍から生まれた、必然の表現。
私の制作の中心には、塩を用いて空間に大きな模様を立ち上げ、会期の終わりにはその塩を海へ還す –
「忘れないためにつくり続ける」という循環があります。
しかし、2020年のコロナ禍により、塩のインスタレーションを制作する機会はすべて奪われてしまいました。その状況下で生まれたのが、ひとりで向き合える平面作品とデジタルアートです。私は油画出身であることから絵画は多少描いていましたが、デジタルは初めての挑戦でした。実際に飛び込んでみると、そこには塩のインスタレーションと同じ“時間の積層”があり、その魅力に強く惹かれていきました。
ここで紹介するNFT作品は、長年の主要モチーフである「迷宮」などの線の構造を「光の層」として扱うシリーズです。物理的な塩の作品や平面作品とは異なる、新しい鑑賞のかたちを持ち、記憶の痕跡をデジタル空間に残していく試みです。物質としての作品が会期とともに消えたとしても、仮想空間の中でつながり続ける。その“もうひとつの記憶の在り方”を目指して描いています。
時に宿る Staying in Time – デジタルドローイング
床一面に塩で地形のようなスクリーンを作り、その上にデジタルドローイング映像を投影した作品です。ここに掲載した画像や動画は、その会場風景で、塩のスクリーンを囲む鑑賞者の姿や、投影されたドローイングのクローズアップを見ることができます。暗い空間のなかで、観客は作品のまわりをゆっくり歩き、ときに身を屈めながら、光と線のわずかな変化を自分自身の記憶と重ねるように見つめていました。
詳しい様子は、鑑賞風景を撮影した動画(Vimeo)でご覧いただけます。


本NFTでご購入いただけるのは、塩のインスタレーションそのものではなく、そのスクリーン上に投影されていた約40分間のデジタルドローイング映像作品です。起伏のある塩の地形に、迷路状の光の線がゆっくりと現れては消えていく様子を記録しています。
この映像は、液晶タブレットの上に一本一本光の線を手で描き、その線を自ら消してゆく行為を繰り返すことで生まれた「手作業の痕跡」そのものでもあり、体験型デジタルアートの核となる映像NFT作品です。
私はこれまで、「忘れないためにつくり続ける」という考えのもと、塩を用いたインスタレーションという手法を用い、記憶と時間をテーマに制作してきました。本作は、そのテーマをスクリーンの中へと拡張した試みです。会期の終わりには塩の作品は片づけられてしまいますが、ここに記録された光の痕跡が、大切な思い出へと繋がる路であって欲しい。そう願っています。
・作品形式:40分のデジタルドローイング映像(動画作品)
・エディション数:3(+作家所蔵AP1点)
・購入先:OpenSea(本作品は、世界最大級のNFTマーケットプレイス「OpenSea(オープンシー)」を通じて販売しています。作品の詳細や購入手続きはリンク先の作品ページをご覧ください)
彩りの記憶 Colors of Memory – 9 Years
9年という時間の積み重なりを、9枚のグラデーションで表現した NFT コレクションです。
デジタル上では、線の密度の違いや色の集積、濃い紫から白へと変化していく微細なテクスチャーを間近に観察いただけます。

このシリーズは、2025年に制作した塩のインスタレーションをベースに再構成した作品です。《関連作品ページ》
私は長年、“忘れないためにつくり続ける”という思いのもと、塩を用いて記憶と時間のテーマに取り組んできましたが、会期が終わると塩の作品は必ず片づけられ、痕跡だけが心に残ります。「彩りの記憶」は、その儚さと時間の層を、色と線の変化として新たに可視化した試みです。
9枚の画像は、それぞれ異なる時間の「層」を象徴しています。深い紫は濃密な記憶を、淡い色は遠くほどけていく記憶をイメージしており、それぞれが独立作品でありながら、全体でひとつの時間の連なりを描くよう構成しています。
・作品形式:静止画ベースのNFT(ERC1155)
・エディション数:9つのイメージ毎に3枚
・購入先:OpenSea(作品詳細や購入手続きはリンク先の作品ページをご覧ください)

山本基のNFTアート作品は OpenSea のこちらのページからご覧いただけます。